皆さま、『スラムドッグ$ミリオネア』をご存知ですか?
2009年に国際映画祭でアカデミー賞を受賞した作品です。
< スラムドッグミリオネアあらすじ >
インドのスラム街で産まれた少年が「クイズミリオネア」に出演しますが、無学で最終問題までたどり着いた彼は不正の疑いをかけられます。ですが彼は不正を働いたのではなく、彼自身が送った壮絶な人生から答えを導き出したのです。
スラムで産まれスラムを駆け抜ける子供達。ヒンドゥー教が急に攻めてきて親を亡くし、物乞いでお金を稼ごうとする大人に目を焼かれそうになり逃げ出す。悪に手を染め、体を売り、必死に生き抜く3人の物語です。
なんとこれがノンフィクションだと言うのだから驚きです…
その舞台ともなったこのスラムが今もインド・ムンバイのダラヴィ地区に残っていました。
今までスラムには足を踏み入れたことがなかったのですが、スラム体験ツアーがあったので二度とない機会と思い参加してみました。
あまりの日本との差にただただ絶句した…
アジア最大のスラム街
ムンバイにあるダラヴィ地区

今回私たちはツアーに参加してこのアジア最大のスラム街【ダラヴィ地区】へ行きました。
ホテルまで迎えに来た車は約40分ほどムンバイの街を走ったのち、線路のすぐ側に車をつけました。
道路のすぐ脇では人々が座って竹籠のようなものを編んでいて、笑顔をこちらに向けてくれたり、ヒンドウー教の神さまを祀る古屋を指差して合唱するところを見せてくれました。
ガイドさんに案内されて線路の上の歩道橋を渡ると見えてくるスラム街。
舗装されていない土の道、大量のゴミ、青いビニールシートがかけられた屋根、自由に歩くヤギと犬… まるで日本とは違い過ぎる景色が広がっていました。
ここからスラム街のツアーが始まります。
スラムで生まれ育った大学生がスラムのひとたちがどう生きているかを話しながらスラム街を案内してくれました。
百万人以上が住む巨大なスラム
歩道橋から降りると思った以上に人が多く、そこで生活する人々の目が向けられ、後ろからは小さな男の子がついてきました。
このスラムには百万人以上の人が住んでいて、ヒンドゥー教、イスラム教、キリスト教、様々な宗教の人がいるそうです。

歩道橋からはまず大量のゴミが目につきますが、これはリサイクル用に集められたものだそうです。
そして歩道橋を降りるとすぐ右手に肉屋。なんの肉だかわからない肉が吊るされています。
日本だったらゴミのすぐ脇に肉屋があるなんて考えられないですよね…
そしてガイドさんはさらにこの近辺を案内してくれました。

その他の民家と変わらないシャッターの閉まった建物を指差して「ここが医者だよ」と教えてくれました。それっぽい看板はありませんし、その他のお店にも看板等ありません。 ダラヴィの中に医者は少なく混むそうで、朝と夕方に開くそうです。
その近くにあったのがムービーシアター。入り口には布がかけてあって、その布の向こうに大きな画面と椅子があり、画面の中には煌びやかなサリーを着たインド人が踊っていました。
学校はこのスラムの中に17校くらいあるそうです。その中で1つだけ私立の学校があり、授業料が高いと言っていました。その他の学校は無償で通えるそうです。
スラムの中には必要な何もかもが揃っていた
「ここには全てが揃っているんだ」というガイドが言った通り、
食べ物屋に衣服屋、医者、娯楽、職場、学校、家・・・このスラムの中に確かに全て、揃っていました。
『生活の場所がスラム』だと思っていましたが、形は違えど私達が過ごしている場所と変わらなかったのです。
ここで生きている人達はこのスラムで仕事をしていて、この一つのスラムの中にいくつもの仕事がありました。

スラム内にある仕事とは
彼らの仕事は一つの小さな建物ごとに分かれていました。
建物は主にコンクリートでできた2階建の建物で、大体6畳からもう少し広い建物もありました。壊れているのか元々ないのか、扉や窓はなく、電気は通っているそうなのですがクーラーやトイレもついていません。スラムの建物の中にトイレは無く、公共のトイレがあるそうです。
1つの建物の中で3〜6人くらいの人がそれぞれの仕事をしていました。
▼中はこんな感じ
プラスチックのリサイクル業

橋の上から見えたゴミの山、それは全てプラスチックの山でした。 それらをリサイクルする仕事がここにはありました。
小さなプラスチックのオモチャなどをトンカチで叩く人、大きなプラスチックのパーツは機械でカットする人、粉々になったプラスチックを洗う人…
働いている人は子供からお年寄りまで、様々でした。
鞄や服の縫製業
私は普段、アパレルの生産の仕事をしていますが、現場を見るのはこれが初めてでした。
私が学校で習ったように同じミシンで、又はもう日本では見なくなった足踏みミシンで服を縫う人たち。
火を焚いた大きな釜の中に染料と布と、手袋無しの素手をそのまま入れて、生地を染める人もいました。
「熱くないのか」なんて当たり前のことガイドさんに聞くこともできず、ただその作業を見るしかありませんでした。
オーダーの仕立て屋もあり、一着服を仕立てると大体1000ルピー(約1500円くらい)だと言っていました。
アルミの溶接業
アルミを溶かす場所を見せてもらうことができました。
少し広めの小屋の隅に、畳一畳分くらい、20〜30cmくらいの凹みがあり、そこでアルミを溶かすそうです。
アルミは660℃以上もの熱じゃないと溶けないのにそんな小屋の片隅でやると言うのだから最初は嘘なんじゃないかと思いました。
ですがその付近には型が置いてあって、部屋の隅には金塊のように固めてられたアルミが積んでありました。
日本の企業とも契約がある、と言っていましたが… どうかここの人達に怪我がないことを祈るしかありませんでした。
お弁当屋さん、配達業
食事屋、お弁当屋などもありました。この辺りには良い香りが漂っていました。
そこで作ったお弁当は別の仕事場へ持って行き、売るそうです。道の途中でチャイを飲む人達もよく目にしました。
因みにこのツアーではツアーの一環としてお菓子を頂けたようなのですが…その前に別の仕事場にて作業員たちが食べてたものを「食べる?」と聞かれ、焦りながら「朝ごはんでお腹いっぱいなの」と断ったため、このお菓子も貰えませんでした。(ツアーガイドが「お腹いっぱいらしい!」と断っていた。(彼に悪気はない))
洗濯業(ドービーガート)

今回のツアーでは見ることができませんでしたが、ドビーガードという洗濯業エリアがあるそうです。このダラヴィのスラムは洗濯業の方が有名かもしれません。
ドビーとは洗濯業をする人たちの職業名だそうで、カーストから外れた最下位にいる人たちのことを言うそうです。
生まれてから職業が決まっているカースト制度も今では廃止になっているそうですが、このスラムを見る限り、まだまだその名残りは続きそうです。
スラムドッグミリオネアの少年が駆け抜けた道、民家の中も歩いた
「ここからは民家だから下を見て歩いて。中は絶対覗かないで。細いから足元には気をつけて。」
そう言われ通ったのは本当に狭くてくらい道で、両脇の建物からは人の声と、食べ物の匂いがしました。
スラムドッグの少年たちが駆け抜けた、まさにあんな感じの道を歩きました。
スラムドッグミリオネアの元になった時代は、いまから60〜70年前と言っていましたが、その頃からスラムの中は殆ど変わっていないようにも思えました。
勿論その頃のスラムなんて知らないのですが、壊れた部分はそのままにして使っていたり、ブルーシートをかけているのを見るとそう思わずにはいられませんでした。
スラムにある貧富の差
スラムの中では珍しい10〜20階建のマンションが見えた時、ガイドさんは指差して
「あそこにはここの企業のボスたちがリッチに暮らしているんだよ」
と言いました。リッチに…と言っても日本で言う築30年以上経っているような、あまり綺麗とは言えないマンンションです。
けれどこのスラムの中ではそのマンションがやけに大きくみえました。

ここのスラムで暮らす人たちは、このスラムで全てが完結する… 仕事もあって医者も学校も娯楽もある。食べ物屋さんも多いのできっと食べ物にも困っていない。
一家族には平均して子供が5〜6人いるそうです。
ここで生まれてきた人たちがここで生きれるように全てが揃っているのです。
なのできっとこれからも、このスラムはこのまま変わらない…この中で完結しているので、変わる必要もないのかな…?とも思いました。
又は、あそこに住むボス達が変えない限り、働く人達が変えたくても変えられないのかもしれません。
▼左:飛行機から見えたスラム、右:滑走路脇から広がるスラム
こちらは旅行後にインスタで友達になったムンバイで暮らす人から送られてきた写真です。

ここはポワイ地区というらしいのですが、左右どちらも同じポワイだそうです。
言わずもがな左側はスラム、右側はオフィス街やマンション、綺麗な公園もあるようです。
この友達も両親はポワイに暮らしていると言っていましたが、「どっち側で…?」とは聞けませんでした…
ダラヴィというスラムも日本と同じ。中身は変わらなかった
このスラム体験ツアーに参加してわかったことは、ダラヴィも日本も中身は変わらない、ということでした。
子供は学校へ行って、大人は働く。食べて寝て、また次の日を過ごす。
スラムという言葉に、どこかもっと悲惨な状況を想像していましたが、
「ここダラヴィの人たちはみんな幸せに暮らしているんだよ」
と言ったガイドさんの言葉は嘘じゃないのだと思います。
スラム体験ツアー
「 生活の仕方は日本と変わらない」と書きましたが、街の様子は日本とは全く違います。
塗装されていない歩道、行き交う動物、ドアのない民家…
女の子が無邪気に駆け寄ってきて私の腕を引いた時、ガイドさんが注意をしてくれました。
当然現地以外の人だけでここへくることは危険と言われているようですが、ガイドさんがいたことで違う世界を安全に見ることができました。
このツアーはムンバイへ行く全ての人にオススメしたいです!
ガイドは英語ですが、聞き取りやすい英語ではっきり一つ一つ丁寧に、中へ入って説明してくれるので、英語がわからなくてもきっと伝わるものがあると思います。
熱心にガイドをしてくれとても好感が持てました。
私が参加したツアーはこちら:スラム見学ツアー<ムンバイ発>
以上、長い文章になってしまいましたが如何でしたでしょうか?
実際行ってみて色々なことを考えさせられ、日本に帰ってきた今でも余韻が抜けません。
インド・ムンバイのことも別記事にて書きますので、是非そちらも読んでみてください!